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矯正治療のアウトライン

Q 矯正治療はいつ頃から始めればよいのですか?  

A 患者さんの年齢や不正咬合の種類、永久歯への生え変わりの状態、治療法などによって治療をスタートする時期が違います。歯科医に相談して適切な治療開始時期を指示してもらってください。子供の場合、本人の矯正したいという気持ちや、受験の問題、保護者の転勤なども考えて、治療を始める時期を決めることが大切です。

 

Q 矯正治療はどれくらいの期間がかかりますか?

A 症状や年齢によって違います。永久歯列で、上下の顎のバランスには問題が少なく、顎と歯の大きさのバランスが悪い場合の治療期間は2~3年位です。しかし、上下の顎のバランスが悪く、さらに顎と歯のバランスも悪い場合は、顎の大きさのバランスを整えなければならない為、長期間かかる場合があります。とくに、遺伝的要素がある反対咬合(受け口)では、成長期に下顎の発育が著しく、第1段階の早期治療を終えても、全て永久歯に生え変わると咬み合わせが再び不安定になることがある為、第2段階の仕上げの治療が必要になります。長期間にわたる治療後の観察、最終的な治療が必要になることがあります。

 

Q 矯正治療は痛みますか?  

A 初めて装置を付けた時や、装置の調整でワイヤーを取り替えた時などは、歯が少し浮いたような痛みを感じます。痛みの大きさや時間には個人差がありますが、通常3~5日でおさまります。その間は、柔らかい物を食べるようにしてください。歯ぐきを指でマッサージしたり塩湯を口に含んだりすると、歯の根の周りの歯肉を温めて血液の循環が良くなり、楽になります。最近では、弾力性のある細い形状記憶合金を使って歯を動かし始めるので、痛みも少ないようです。いずれにしても、小学校低学年の子供でも、我慢できる程度の痛みですから、あまり神経質になる必要はありません。

 

Q 矯正治療は大人になってからでも出来ますか?

A 出来ます。しかし、子供に比べると、顎の成長発育も終っているので、骨が硬く、歯の移動がおそく、治療結果にはある程度の限界があることもあります。最近では日本でも、アメリカと同様に、顎や歯の健康を保つため、あるいは対人関係でセルフイメージを良くするため、成人が矯正治療を受ける例が多くなっています。

 

Q 虫歯の治療をしてから相談に行った方がよいのでしょうか?

A 虫歯の治療をしないと矯正装置が付けられなかったり現在痛みなどの症状がある場合には、矯正治療に先立って虫歯の治療をしていただくことになります。しかしそのような問題がなければ、先に矯正治療を始めることもあります。 また、お口の中の歯にかぶせてある冠や詰め物は、悪い歯並びの状態に合わせて作られていますので、矯正治療の途中あるいは終了後に作り直さなくてはいけないこともあります。 いずれにしても検査をしないと何とも言えません。 まずはご相談下さい。

 

Q メタボンの前歯やブリッジ、神経を取った歯がありますが、矯正できますか?

A 処置した歯でも矯正治療には支障はありません。歯列矯正治療では、スペースが必要で歯を抜かなくてはいけない場合がほとんどです。歯科矯正学的に抜くべき歯は健康だが、その隣の歯がすでに神経を取っていたような場合、トータルに考えて後者を抜歯することもありえます。 セラミックなどの差し歯の場合、現在の悪い歯並びにあわせて無理に作ってあることがほとんどなので、歯列矯正治療により理想的な歯並びになった場合、作り直さなくてはならないかもしれません。 ブリッジの場合には、すでに失われた歯の両隣の歯を支えにして橋渡しをしています。しかし歯列矯正治療ではスペースが必要で歯を抜かなくてはいけない場合がほとんどですので、ブリッジの橋渡しの部分を切断してスペースを作って、治療していくことが多いでしょう。その場合には、矯正治療終了後、ブリッジあるいは冠の作り直しが必要になると思います。

治療中・治療後

Q 矯正治療には患者サイドの協力が必要ですか?  

A 歯磨き、矯正装置や食べ物についての注意、診察時間の約束など、患者さんの協力が必要な事は沢山あります。協力の善し悪しは、治療結果や治療期間に影響するので、歯科医任せではなく、両者が信頼し合って協力関係を保つことが、何よりも大切です。  

 

Q 治療中に食べられないものがありますか?

A 堅いおせんべいや氷の丸かじり、粘着生の強いキャラメルやガム等は、装置がこわれたりワイヤーが曲がったりしやすいので、食べないようにして下さい。また、甘い物もむし歯になりやすいので、矯正治療中は我慢が必要ですから、バランスの良い食事をとるようにして下さい。

Q 矯正治療中歯磨きで注意するのはどんな事ですか?

A 装置が歯の表面についているので、口の中が汚れやすくなります。歯科医や歯科衛生士に教えてもたっ磨き方で、歯ブラシやデンタルフロスなどの補助具を使って、ていねいに磨いてください。歯磨きによって、装置が壊れる事はあまりありません。フラッシングが悪いと歯肉が腫れる事があります。こんな時はウォーターピックなどを使い、歯や歯ぐきを健康に保って下さい。

 

Q 治療中にむし歯になる事はありませんか?

A 歯の表面に装置をつけるので、口の中が複雑になり、食べかすが付きやすく、むし歯になりやすい環境になります。しかし、教えられた通りきちんと歯磨きやフロッシングをすることで、むし歯になることを防ぐことができます。なによりも、患者さんのやる気が大切です。また、治療を始める前に、奥歯の噛む面の溝をプラスチックでつめてむし歯になりにくいような処置を施すことができます。

 

Q 治療中にむし歯が見つかったらどうするのですか?

A 前歯のでこぼこや重なりがなくなりきれいに並ぶと、それまでは見えなかった箇所に、むし歯が現れてくる事がよくあります。むし歯を発見したら、いったんその部分の装置をはずして、むし歯の治療をおこないます。

歯並び・噛み合わせ

Q 扁桃腺、アテノイド、アレルギー性鼻炎などは、歯並びや咬み合わせと関係がありますか?

A 鼻が悪いと鼻呼吸がしにくいので、口を開けて息をするようになり、口の周りの筋肉の発育も悪くなります。そのため、歯ぐきが腫れたり咬み合わせが不安定になり、出っ歯や開咬のような不正咬合になりやすくなります。治療中の歯の移動や治療後の歯並びの安定のために、あらかじめ耳鼻科の医師に相談してください。

 

Q 小さい頃、食べ物をよくかむ習慣のある人は、顎が発育し、歯並びが良くなるというのは本当ですか?

A 小さい頃から、歯ごたえのある食べ物をよく噛む習慣があると、顎の骨や筋肉の発育を促し、顎関節に対してもよい影響を与えます。しかし、いくら良く噛んでも細長い顔が四角くなったりするわけではありませんから、顎の発育や歯並びに与える影響には限度があります。

 

Q 歯並びは遺伝しますか?

A 子供の顔や体格が親に似るように、顎の大きさや形、歯の大きさや形も似てきます。出っ歯(上顎前突)や受け口(反対咬合)も遺伝によって、親に似ることがよくあります。 遺伝とは別に、指しゃぶりや舌癖、又はむし歯で永久歯を抜いたままにしたことなどが原因で、後天的に不正咬合になることもよくあります。

 

Q 指しゃぶりや舌癖のような習癖は、歯並びに影響しますか?

A 指や舌などの習癖によって、上顎の前歯を前に押し出すようになるので、出っ歯になったり、上下の歯が咬み合わない開咬になり、その結果発音も不明瞭になります。矯正治療中にこのような習癖があると、歯の移動の妨げになります。悪い歯並びにならないように、低年齢のうちに指しゃぶりや舌癖を治しておきましょう。

矯正治療に付随する問題

Q 健康保険が矯正治療に適用されるのはどんな場合ですか?

A 唇顎口蓋裂の矯正治療は通常、開業医・大学病院で健康保険が適応されます。しかし、健康保険を扱わない診療所もあるので、歯科医に相談して下さい。また上下の顎が前後点左右に大きくずれている症状(顎変形症)を外科手術で直す場合、大学病院で受ける手術や前後の矯正治療に限って、健康保険が適用されます。

 

Q 顎関節症はどんな病気ですか?

A 物を噛んだり、食べたりするのは主に下顎の働きです。このように、下顎を関節のところで動かしたとき、ガクッと音がしたり、口を大きく開けにくい、痛みを感じる、などの症状をともなう場合顎関節症とよんでいます。 顎関節症は現代病の一つといわれているように、中学生・高校生の歯の検査では10~20%の頻度でみられ、精神的なストレス・悪い咬み合わせ・(歯並び)が原因の場合は、矯正治療で改善する事があります。

 

Q 抜歯が原因で、顎関節症になる事はありませんか?

A 顎関節症は、ストレスや歯ぎしり、噛みしめなどの顎関節に負担をかけることの他に、噛み合わせが深すぎたり、前歯の歯並びにでこぼこがあるなど、咬み合わせの状態を治すのが矯正治療ですから、抜歯したために顎関節症になる事はめったにありません。治療中に顎関節に音がする、口が開きにくい、顎関節部が痛むなどの症状がある場合は、すぐ歯医者に相談してください。矯正治療を始める前に、顎の動き方や顎関節の状態をよく調べてもらってください。すでに顎関節症の症状がある場合には、取りはずし式スプリントを装着し、経過をみてから矯正治療を開始します。

 

Q 顎を切って矯正することがありますか?

A 矯正治療だけでは、咬み合わせが充分に治せない症状があります。この場合は、上顎と下顎の大きさを整える外科矯正を行って、きちんとした咬み合わせをつくります。 多いのは下顎前突・顎変形症・開咬などの場合で、10~20歳位になってから下顎を切ってずらし、噛む機能や横顔などを改善します。方法は術前矯正→外科手術→術後矯正の順で行い、外科手術は大学病院で2~3週間の入院が必要です。

 

Q 親知らずは抜く必要があるのですか?

A 親知らずとは、18歳ごろ歯列の一番奥に生えてくる第三臼歯のことです。あとから大きな親知らずが生えてくるので、生えるすき間がなく、顎の骨のなかに倒れて埋まっている場合もあります。親知らずが傾斜して生えると、歯磨きが充分できなくてむし歯になったり、周りの歯肉が腫れて炎症をおこしやすくなります。また、きれいに並んだ歯並びを親知らずが後ろから押して、少し凸凹の歯並びになることがあります。個人差はありますが、抜いたほうがよい場合がありますので、歯医者に相談してください。

その他Q&A

Q 目立たない矯正装置はありませんか?

A 通常、プラケットと呼ばれる装置を歯の表面に付け、そこにワイヤーを通して歯を動かします。このプラケットを歯の表面に付ける場合には、乳白色や透明なセラミック製やプラスチック製のプラケットを使って、目立たなくする方法があります。また、プラケットを歯の裏側に付ける方法もあります。しかしこの方法は、どの症例にも応用出来るわけではないので、歯科医に相談してください。  

 

Q 八重歯の場合はどのような治療をしますか?

A 八重歯になる歯は犬歯です。犬歯は根が太くて長く、丈夫で長持ちします。また、顎の(前後、左右の)運動をスムーズにおこなうためにも、大切な役割を果たします。そのため、殆どの場合、犬歯の後ろの歯を抜いて、前歯の凸凹の歯をずらして全体の歯並びを矯正します。

 

Q 笑った時に、歯茎が見えてしまうんですが、それも治せますか?

A 程度によりますが十分改善することができます。上の前歯を押し込むように歯を動かしていけば、笑った時に歯ぐきが目立つという悩みも解消でき、あなたの笑顔の印象も大きく変わると思います。  

 

Q 気になっている所のみに装置を付けて治療することはできませんか?

A 咬み合わせは上下の歯並びの関係で成り立っていますので、基本的に歯列矯正は上下全ての歯に装置を付けて理想的な位置まで動かしていかなければなりません。 しかし100%理想的な歯並びにならないかもしれませんが、治療期間に制約のある場合などは気になっている一部のみに装置を付けて治療する場合もないとは言えません。まずはご相談下さい。

 

Q 前歯にすき間があり先天的に歯の数が1~2本足りない場合は、どうするのですか?

A 歯の無い所に隣の歯を動かして、歯並びを整えます。矯正治療後に歯の形を修正したり、スペースのある場所に人工的な歯を入れる場合もあります。

 

Q 抜歯せずに矯正治療出来るのはどのような場合ですか?

A 顎と歯の大きさや、上顎と下顎の大きさのバランスが良く、軽度の凸凹で口元が比較的よい場合には、抜歯しないで治すこともあります。抜歯しないで矯正出来るかどうかは、歯科医がレントゲン検査などの資料によって診断します。

 

Q 抜歯したすき間はどうなりますか?

A 歯の表面に矯正装置をつけて抜歯したスペースに少しずつ歯を移動させ、顎骨の上にきれいに歯が並ぶと、スペースは無くなります。

 

Q 矯正治療は受験勉強の妨げになりませんか?

A 矯正治療による精神的、肉体的な負担の大きさは、患者さんによってちがいます。もし矯正治療が負担になり、ストレスにつながるようなら、受験前はなるべく避けて受験後に治療をスタートさせるか、あるいは歯科医と相談して出来るだけ負担にならない方法や適切な時期に治療を受けるようにしてください。

Q 装置をつけることで、発音が不明瞭になりませんか?

A 装置をつけた当初は、少し喋り辛くなりますが、慣れて来れば普通に喋れるようになります。反対咬合や開咬など、サ行やタ行の発音が不明瞭な不正咬合では、矯正治療が終って歯並びが整えば、舌を含む口腔周囲の機能が正常になり、発音も良くなります。

 

Q 子供が矯正装置をつけることで、いじめられたり、からかわれたりしませんか?

A 近ごろは日本でも、欧米のように矯正治療が普及してきたので、装置をつけていることでからかわれたりすることはまずありません。反対に歯並びを悪いまま放置しておくと、仇名をつけられたり、口臭を指摘されてはずかしい思いをし、その人のイメージダウンやコンプレックスに繋がります。欧米では、歯並びは教養や家庭のしつけを象徴するものです。将来、国際人として活動していくためにも、悪い歯並びの方が恥ずかしいことだと誰もが考えるような世の中になって来ました。

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